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日別アーカイブ: 2025年9月17日

機創技研の雑学講座~変遷~

皆さんこんにちは!

機創技研、更新担当の中西です!

 

~変遷~

 

1|職人技と鋼船の時代(〜1970年代)

蒸気からディーゼルへ、木造から鋼船へ。修理はリベット→溶接へと主役が交代し、

  • 罫描・手計測・型板を頼りに**現合(げんごう)**で板継ぎ・骨替え

  • 機関は直列・V型中速機を分解点検で延命

  • 船底は手作業のケレン+塗り替え、ドック工程は“人手と段取り”が決定要因
    職人の勘と経験が品質を左右する、クラフトマンシップ中心の時代でした。


2|機械化と標準化:コンテナ化がもたらした変革(1970〜1990年代)

世界的なコンテナ化が進み、運航の定時性と回転率が最重要に。

  • ドックはガントリー・大型クレーン・自走台車で重整備を効率化

  • 溶接は自動・半自動、NDT(UT/RT/MT/PT)で品質を可視化

  • 機関はメーカーのオーバーホール基準で標準整備化、補機はユニット交換が主流

  • **船級・港湾国管理(PSC)**が浸透し、書類・記録の整備が必須に


3|グローバルサプライチェーンと外航需要の拡大(1990〜2000年代)

アジアのドック・修繕ヤードが台頭。コスト×リードタイムの競争が激化。

  • ライディングクルー(航海同乗修理)でオフハイア最小化

  • CMMS(保全管理)で時間基準保全→状態基準保全への布石

  • 塗装は高機能防汚塗料の普及でドック間隔が長期化、工程は“環境条件”管理へ


4|規制ドリブンの改造(レトロフィット)期(2010年代)

環境・安全規制が修理の主戦場を変える。

  • **BWMS(バラスト水処理装置)**の搭載、配管・電装・制御まで一体工事

  • **SOx規制(硫黄分上限)**対応でスクラバー改造や燃料切替

  • CO₂・NOₓ基準強化に伴うプロペラ・バルブ最適化、低摩擦塗料など省エネ改造

  • ドローン・内視鏡で閉所・高所の点検省力化、安全と品質の両立が進む


5|DXと予知保全:止めない修理へ(2020年代〜)

センサー・通信の発達で“壊れる前に手を打つ”が現実に。

  • 機関・軸受・発電機の振動・油劣化・温度を常時モニターし予兆検知

  • 3Dスキャン・CAD/BIMで事前製作→現地一発合わせ、停泊時間を短縮

  • デジタル証跡(作業ログ・写真・レポート)で船級・荷主への説明責任を高速化

  • ロボ・ROVによる水中検査・船底清掃の常用化でドック外保全を拡充


6|タイムラインで一気に把握 ⏱️

  • 〜1970s:職人技・現合/リベット→溶接

  • 1980–90s:機械化・NDT・標準整備/コンテナ化で回転率重視

  • 2000s:グローバル調達とライディング修理/CMMSの導入

  • 2010s:環境規制レトロフィット(BWMS・SOx等)

  • 2020s–:DX・予知保全・水中ロボ/ドック最適化と証跡デジタル


7|ビジネスモデルの変化

  • ドック集中→分散保全:寄港地での短時間メンテ航海中ライディングの組合せへ

  • EPCM化:改造は“設計・調達・施工・船級対応”を束ねる総合受託が主流

  • サービスとしての稼働(Uptime as a Service):契約を“時間”から“稼働率・燃費改善”に移す動き


8|いま現場で効く“運用工学”💡

  1. 事前3Dスキャン→工場先行製作
     実船合わせを減らし、停泊中に一発取り付け

  2. 予兆KPIの見える化
     振動・温度・油分析のしきい値とアラート動線を船陸で共通化。

  3. 工程のモジュール化
     BWMS・スクラバーは架台・配管ラック・ケーブルハーネスをユニット化。

  4. 安全×品質のデジタル証跡
     WPS/PQR・溶接履歴、NDT結果、気象・塗装環境を写真+時刻同調で残す。

  5. 港湾調整テンプレ
     入出港、タグ・クレーン・廃棄物処理、危険作業届のチェックリスト化で待ち時間を削減。


9|成果が見えるKPI📊

  • オフハイア時間(h/年)/ドック滞在日数

  • 再工事率・同一不具合の再発率

  • 安全指標:TRIR、ヒヤリハット報告率(高いほど学習文化)

  • 工程遵守率:クリティカルパスの遅延回数

  • 予兆アラート→故障回避率/未然防止件数

  • 燃費・排ガス改善量(改造後の実績)

  • 証跡整合率(船級・荷主査察での指摘件数)


10|これからの船舶修理:5つの潮流 🚀

  1. 脱炭素改造の本格化:EEXI/CII対応、プロペラ・エナジーセーバー・メタノール/LNG対応など。

  2. 燃料転換×安全設計:低引火点燃料(LNG/メタノール/アンモニア)に合わせた防爆・換気・検知の再設計。

  3. グリッド化したメンテ:寄港地ネットワークでデータ連携→部材前出し→短時間施工

  4. ロボティクス常用:自律ケレン・水中清掃・タンク点検ドローンで人が危険域に入らない現場。

  5. デジタルツイン:実運航データで劣化予測→部材手配→工程自動編成まで一気通貫。


11|現場メモ:明日から試せるミニ戦略 🧰

  • “寄港3港前”シグナル:センサー異常・要部材を3寄港前に確定→前出し

  • 塗装QCの3点セット:素地粗さ・塗布量・環境(温湿度/露点)を写真+計器値で保存

  • 混合チーム朝礼:船員・ヤード・メーカーで5分RACI(誰が、何を、いつ)

  • ライディング標準BOX:工具・消耗品・安全具の定番セット化で積み忘れゼロ

  • ドック撤収リスト:バース解放のT-48/T-24/T-8hで撤収作業を段階化


まとめ ✨

船舶修理業は、
職人技の現合 → 機械化・標準化 → グローバル分業 → 規制レトロフィット → DX・予知保全
と進化してきました。
これからの競争力は、短時間で“確実に”直す技術に、データと安全と証跡を重ねられるかにかかっています。
“船を止めない修理”こそ、海運の血流を守る最高の価値。現場の一手一手が、世界の物流を走らせ続けます。⚓️

 

 

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